[要旨]
Adoption, as an alternative to childbearing, is a widely accepted means of creating a family in
the U.S. today. According to the historical literature, a modern form of adoption was a legal
innovation in the mid-19th century that evolved over time and had profound implications for
the welfare of adopted children and adoptive parents. Due to the lack of quantitative data,
however, we know little about the extent and nature of adoption in the U.S. before WWII.
How widely was adoption practiced before its widespread social acceptance? Who adopted
children, and what motivated them to adopt? In this paper, using microdata from the federal
censuses in 1880-1930 and 2000, I document the prevalence of adoption and study the
characteristics of adoptive children and their households. Among other things, I re-evaluate
the commonly held hypothesis that, during the early 20th century, adoption evolved from
"pragmatic" to "sentimental" adoption as adoptive parents began to demand children not for
their potential labor value but for the utility of parenting itself. This paper provides the first
empirical analysis of adoption in the pre-WWII U.S. using nationally representative data.
参考文献;
岩間俊彦『イギリス・ミドルクラスの世界―ハリファクス、1780−1850』ミネルヴァ書房、2008年。関連する他の研究について検討されたい方は、拙著4章の脚注1・3・4・5・7、補論脚注3・4・5・7・8等に引用されている文献を参照してください。
「熟練労働者(skilled worker, workman, artisan, ouvrier, artigiano, Geselle, Facharbeiter, etc.」はよく用いられてきた語であるが、それが何であるかはかなり難しい問題である。このシンポジウムでは、何が熟練労働者を熟練労働者たらしめていたのかを、20世紀前半の熟練労働者の再定義過程に注目して、いくつかの事例を比較しながら考察する。ここでは、最初の産業社会イギリスも想起しながら、このシンポジウムが扱おうとする問題領域を概観してみよう。 「熟練労働者とは徒弟修行を終えた者である」という答えは、非常に簡明ではあるが、近代産業社会における熟練労働者をかなりの程度、包含して説明できる。
むろん、ここで徒弟修行とは、中世・近世の特権的同職団体と結び付いた徒弟制度と必ずしも連続しているわけではなく、むしろ多くの場合は、産業社会の確立とともに新たに生成ないし再編された徒弟制度である。また、近代産業社会で徒弟修行を要件とした熟練労働者が広く観察されるとしても、それは決して長期安定的ではなく、19世紀末から20世紀初頭にかけては多くの産業社会で、徒弟制度の形骸化や不充分性が指摘されるようになった。
では、そこで発見された問題は何だったのであろうか。これが共通の第一の問いである。特定の経路で入職した者だけが職業を独占することに対して、資格を開放する(「資格の民主化」の)必要性が唱えられるようになったのか。徒弟制度は資格を付与するが、必要な能力までは保証できなくなっているという能力養成システムとしての問題か。それとも、現場で獲得される経験や技能では絶対に代替できない学理の必要性が広く認識されるようになったのか。
こうして、徒弟制度と熟練労働者の一義的な結び付きは変容を迫られ、一方では、徒弟修行を終えただけでは熟練労働者とは見なされなくなり、他方では徒弟修行を経験しなくても熟練労働者となる回路が形成された。では、再定義後の熟練労働者の本質は何だったのであろうか。これが第二の問いである。それは、近代産業社会の古典的な熟練労働者とは断絶するのか、それとも何らかの連続性を看取できるのだろうか。この過程に作用した問題認識、関与した諸主体の利害関係(殊に企業・経営者団体、技師団体、労働組合、職業教育機関と教師たち、および政府の掲げた目標)を明らかにしながら、各事例における再定義の特質を描き出すことにしよう。
第三の問いは社会的な価値に関わる。このシンポジウムでは、個々の業種・職種の中核的な担い手をどのように位置付けるかという問題だけでなく、産業社会の変転の中で公正感、公平感、社会平和、労使関係の安定など実現すべき価値との関係で、熟練労働者がどのように問題となったのかを跡付けることで、狭く熟練労働者の訓練・養成問題のみに閉ざすのではなく、むしろ、それを通じて、その時代の産業社会の特質に迫り、また労務管理問題の発見と労務管理の生成といった問題群への接近をめざす。